噛み合わせの影響

咬合問題、 つまりは歯のかみ合わせと全身への影響を二十数年前から研究してきた
日本歯科大の小林義典教授は「歯ぎしり」(ブラキシスム)に注目する。
人は四六時中、歯をかみ合わせているわけではない。食べ物をかんだり、
つばを飲み込むときにかみ合わせるだけで、その時間は以外にも1日十分から
十五分程度にすぎない。
そこで歯ぎしりが浮上してくる小林教授は協力者に夜寝ている間、小型の無線装置を
付けてもらい、脳、心臓、眼球、呼吸、かむ筋肉の動き、歯の擦れ合う音などを
終始記録する実験を行った。この結果、正常な人でも約15分間は、はぎしりをしている。
歯ぎしりを自覚している人や他人からら歯ぎしりを二度以上指摘された人は
平均40分以上も歯ぎしりをしていた。歯ぎしりのパワーはガムを強く噛んだときの
数倍から数十倍に達する歯ぎしりが起きると、体にどんな影響が出たか。
必ずと言って良いほど呼吸と心拍の乱れが出て、ポックリ病といわれる突然死の有力な
原因の一つにも挙げられている「睡眠時無呼吸」も頻発した。
この睡眠時無呼吸の起きる頻度は歯ぎしり癖のある人の方が明らかに多かった。
「持続時間とそのカから考えると歯ぎしりは自律神経障害、情勤ストレスを生じさせる
など体の機能に破壊的な影響を及ぼしていると考えられる」と小林教授。
では歯ぎしりはなぜ起きるのか。
感情・情緒因子説と咬合問題(歯のかみ合わせの狂い)説に二分され、論議されている。
米国の学者の研究では就 職の面接、学校の試験、子供の病気、離婚の決心…と
感情や情緒に大きな変化があったときに起き、両者の密接な関係が確認されている。
ところが小林教授は感情や情緒的な問題で誘発された歯ぎしりには持続性がなく、
良くて一日程度の一過性だと分かってり、体に破壊的な影響を及ぼすことは少ないとみる。
小林教授は選りすぐりの二十代のかみ合わせの正常な七人に、診察でも見逃すほどの
0.1ミリの厚さの詰め物を下の奥歯に人れ、人工的にかみ合わせの狂いを生じさせ、
例の無線装置で追跡した。すると一過性ではない持続的な歯ぎしりが起きたのでる。
自律神経系の機能に変化も起き、心電図の乱れ、アドレナリンの増加、睡眠障害、
情動ストレスも生じた。詰め物を外すと約一週間後には正常レベルに回復した。
「かみ合わせが歯ぎしりを誘発させ増大させていると考えられる。」
小さな噛み合わせの狂いが歯ぎしりを介在して全身的な影響を与えている可能性が
読みとれるのだが小林教授はさらに研究が必要と話している。 
                          ある新聞記事より



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