動物が怪我をすると,傷口を舐める。
そう言えば,私たちも幼い頃,傷口を無意識に舐めていたことを思い出す。
おそらくこの行為は,動物として本能的なものであろう。
しかし,どうし舐めるのだろうか?舐めることに何か特別な作用があるのだろうか?
じつは,唾液(だえき)には傷口を消毒する成分が含まれている。
例えば,リゾチーム。風邪薬にも含まれているのでご存知の方も多いかと思う?
他にもラクトフェリンや免疫グロブリンであるIgA(アイジーエー)等が含まれ,殺菌作用を持っている。
 さて体を構成する細胞は約60兆個,しかし体に付着する細菌数は,およそ100兆個。
体の細胞より細菌の数の方が多い。
ちなみに唾液一ミリリットル中の細菌数は,一億から十億個。
それに比べ,皮膚の表面には一平方センチあたり千個と少ない。
もし皮膚に唾液と同じ数の細菌が生息していれば,傷口は化膿するに違いない。
ところが,口の中の傷は,化膿しにくい。
これこそ,唾液の殺菌作用と考えられるのだ。
 
ところで,傷口をなめる理由は他にもある。
口の中の傷は,皮膚の傷より数倍治りが早い。
唾液の中には,傷口を早く治す物質も含まれている。
面白い実験がある。
まずネズミの背中を一センチ四方に切る。
そしてネズミを一匹づつ飼った場合と数匹を一緒に飼った場合を比べる。
数匹を一緒に飼うと,ネズミはお互いの傷口を舐めあう。
しかし,一匹では自ら背中の傷を舐めることが出来ない。
一匹づつ飼った場合,二日後の傷口は二十%しか治っていない。
しかし互いに舐めあったネズミは,七十五%も傷口がふさがっていた。
唾液には,傷口を早く治す作用があることがわかる。
 
傷口を舐めてもらったネズミは,治りが早い。
これは唾液に含まれる上皮成長促進因子(EGF)の作用である。
 
唾液には,もっと他にも面白い作用がある。たとえば,"ガンの予防"
これは唾液中の酵素ペルオキィシダーゼによるものだ。
さまざまな発ガン物質を唾液に30秒間漬ける。
そうすると発ガン作用は,著明に低下する。
唾液中のペルオキィシタ−ゼは,発ガン作用を低下させる。
そう言えば,"よだれの多い赤ちゃんは元気に育つ。"
"唾液の多いお年よりは,丈夫で長生き。"と言う言葉がある。
唾液が多いことは,体が若いことを意味するのだろう。