・ 東京医科歯科大學名誉教授 明治大学客員教授 窪田金次郎 ナイジェリアの人たちは歯をあまり磨かないので、口の中は汚いが、 虫歯はなく、いい歯並びで、噛み合わせもいい。歯は強くすり減つている。 しかし、歯槽膿漏の兆侯もなければ、また、歯列が平になる程すり減っていて、 顎関節も偏平に変形しているにもかかわらず、何等の機能障害も起こしていない。 歯の噛み合わせが食生活を通じて徐々にすり減り、それに顎関節の形が適応 しながら改造されているから、顎を動かしても違和感が起きないのである。 ヒトが生まれながらにしてもった咀嚼システムの歯の噛み合わせが、 その個人個人にとっての 固有の噛み合わせである。たとえ、噛み合わせが悪くとも、 必ず治さなければならないというも のではない。それを、歯並びだけを人為的に 矯正したり、また、歯を削つて噛み合わせを調節したりすると、顎関節など、 咀嚼システムはその急激な変化に適応しえず、無理が起こって、その 機能障害が 起きる結果となる。しかも、歯は脳に直結しているので、歯への影響は脳に直接波及 して、それが全身のほかの機能システムにも連動しているで、それへの影響も大きい。 ヒトの寿命は80歳台であるのに歯の寿命は50歳台と、その間に30年のギャップが 出来ている。 歯の寿命を短くしている元凶は虫歯である。 虫歯の早期治療と悪い治療法がこの鍵を握つている。 歯を咀嚼システムで考えると歯の治療法はおのずと変わって来るはずである。 歯の治療は咀嚼システムの機能を再生させるものでなければならない。 ・愛知学院大学歯学部 川口豊造 川口 ある歯科医院で両側の臼歯部の治療を受けてから、顎がだるい、 おかしいということで別の医院を訪れたら欠損があったのでブリッジを装着 した。しかし全然よくならないので3回もやり直したという症例です。 27・8歳の方ですが、このときは多少精神的にもおかしいことが起こりつ つある状況たったのです。時間をかけてお話しする必要があるのはこうい う場合なんですね。 3ー3のようにほとんどが予防充填されています。こういう予防充填など もセントリツクが甘くなるもとなのです。また小児歯科のシーラーなども 咬合の問題からするとあまりよくない気がします。だからもし必要な場合 は慎重にやってほしいと思います.この人の一番の原因はそのあたりでは ないかなと思うのです.上顎を充填されてなんとなくおかしくなって、下 顎はまた別の歯科医院で治療を受けて、それで手に負えなくなってきた。 川口 できることなら固定するような方法で補綴はしたくないと考えて ます。自分の技術に自信がないこともあると思います。一生懸命やって も、数年たつとマージンが下がることから始まって、いろんな問題が出て きますね。補綴するのがだんだんこわくなるのです。