学校歯科検診が歯の寿命を短くしている
●学校歯科医の役割
小学校では、毎年、新学期になると、歯科検診が行われます。
それぞれの小学校には担当の学校歯科医が決まっていて、養護の先生
と協力して、生徒の保健衛生に専門的なアドバイスをすることになっているのです。
学校歯科検診もその一つの仕事です。ところが、学校歯科医が忙しいために、
学校での保健衛生に積極的にアドバイスをしている例は、全国的にはほんの一部です。
学校歯科医の多くは、歯科検診のときだけ学校に出かけていくのが実情です。
●検診の結果が治療勧告書につながる問題
学校歯科検診は文部省の監督下に全国一律に行われており、学校歯科医がこれに協力します。
いっせい検診は、とくに歯の健康に問題のある子どもを見つける、
スクリーニングの役割を果たしています。
問題はこの検診の結果がすぐに「治療のおすすめ」(治療勧告書)につながり、
歯科治療を受けることを、生徒と保護者にほとんど強制しているところです。
「治療のおすすめ」を渡された生徒は、近くの歯科医院で治療を受けます。
そして、治療が終わったというハンコをもらって、担任の先生に届けなければなりません。
治療するかしないかは、本来は保護者の自発的な判断にまかされていることですが、
治療済みの紙きれを提出しないと、宿題をいつまでも出さないときのように、
叱られてしまいます。
教育委員会が、子どもにできるだけ治療を受けさけるように、
養護の先生に求めているのでしょうか?
治療済みの紙の集まり方で、養護の先生の評価が決まるのでしょうか?
●治療勧告は歯の寿命を短くしている
問題のある生徒が歯科医院を受診することは、もちろん必要なことです。
しかし困ったことに、多くの歯科医院では、今でも削って詰めることしかしてくれません。
ほんとうは、この本にあるように、その子どもの「かかりやすさ」を把握して、
その子にあった指導と処置をすることが、その子の将来にとって大切なのです。
今の保険の仕組みは、長い目で見た治療や、
病気にかかる前の予防を行うことは、むずかしいのが現実です。
そのために学校歯科検診をきっかけに、子どもたちがどっと治療を受けて、
削られ、詰められ、かぶせられてしまいます。
学校歯科検診の結果、生徒に渡される治療勧告書は、
実際には若い永久歯が生えそろう、そのスタートの段階で、
歯の寿命を短くしているのです。
いったん若い歯を削ってしまったら、その歯は50年と、
もたなくなってしまいます。お子さんが治療勧告を受けても、
治療を急いでハンコをもらってハイオシマイ、にしないことが大切です。
実際、虫歯の初期で、フツ素塗布などを繰り返しながら、注意深く観察し
ているような場合でも、学校歯科検診では治療勧告を受けます。
学校検診には、一番大切な予防の考え方が足りません。
治療勧告を受けたら、長い目でどういう処置がその子のためになるか、
どんな注意が必要か、よく説明してくれる歯科医に相談してください。
すぐに治してくれる歯科医が、必ずしもいい歯科医というわけでは
ないのです。